出張ネイルの契約と、顧客宅での事故・特商法の整理

出張ネイルは、施術する場所が店でないだけで、契約を結ぶ場所と事故の責任の置き方が変わります。訪問販売になる場面、お客様宅の事故、出張費とキャンセル、担当ネイリストとの契約を、書類の書き方まで順に整理します。

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このページの要点

  • 出張で施術するだけでは訪問販売にならない。契約の申込みを受け、契約を結んだ場所で決まる。
  • お客様宅で回数券や追加の契約を結ぶと、訪問販売として書面と8日間のクーリング・オフが前提になる。
  • お客様宅の事故は、責任の全部免除は無効。上限は軽過失にのみ適用と明記し、保険と突き合わせる。
  • 出張費は施術料金と分けて総額で示し、到着後の不在や待機、不可抗力の扱いまでキャンセル規定に入れる。

結論

出張でネイルを施術すること自体は、特定商取引法(以下「特商法」といいます)の「訪問販売」ではありません。訪問販売かどうかは、施術する場所ではなく、どこで契約の申込みを受け、契約を結んだかで決まります。予約ページやLINEで申込みを受け、お客様宅では予約どおりの施術だけをするなら、通常は訪問販売の問題は表に出ません。

問題が出るのは、お客様宅で新しい契約を結ぶとき(回数券、追加メニュー、物販など)です。このときは書面の交付と、8日間のクーリング・オフ(期間内なら理由を問わず解除できる制度)が前提になります。もう一つの柱は事故です。「お客様宅での事故は一切責任を負いません」は、消費者向けの契約では無効になる書き方です。責任を免れようとせず、起きる前に条件を確認し、起きた後の分担を決めておきます。

ここでは、出張に固有の部分に絞ります。店舗の規約の全体像はネイルサロンの利用規約・プライバシーポリシー・特商法表記のページにあります。企業のオフィスへ出向く法人向けは事業者間の契約になるため、個人のお客様を主に扱います。

出張ネイルは訪問販売になるのか。分かれ目は契約を結んだ場所

訪問販売は、営業所、代理店、露店のような通常の営業の場所以外で、役務(サービス)の契約の申込みを受け、または契約を結んで行う取引です(特商法2条1項1号)。見られるのは契約を結んだ場所であり、施術を行う場所ではありません。次の表は、場面ごとの見方です。

契約を結ぶ場面と、訪問販売の見方

場面訪問販売の見方整えること
予約ページ・LINE・電話で申込み、お客様宅では施術だけを行う申込みを受けた場所は自宅の外。ウェブなどでの申込みは通信販売の側で、広告の表示(特商法11条)が問題になります。通信販売には、訪問販売のような法定のクーリング・オフはありません予約ページに料金、出張費、キャンセル条件を表示する
お客様が「この施術を契約したい」と求めて、お客様宅で契約する書面やクーリング・オフなどが適用されない扱いがあります(特商法26条6項1号)。氏名等の明示(3条)と、断った人への勧誘の禁止(3条の2)は適用されますいつ、どの方法で、何の契約を求められたかを記録する
問合せや見積りの依頼に、こちらから「うかがって説明します」と申し出て訪問し、その場で契約する通達は、問合せの段階で事業者が訪問を申し出た場合や、電話で約束を取って訪問する場合を、請求に当たらないとしています訪問販売として、書面とクーリング・オフを前提にする
予約した施術の最中に、回数券や定期プラン、物販を勧めて契約するお客様が求めたのは、その日の施術です。通達は、修理で来訪した事業者が別の工事を勧誘して契約する場合などを、適用除外に当たらないと考えていますお客様宅では契約せず、後日お客様自身の端末で申込んでもらう
お客様宅で勧誘し、その場で二次元コードを示して予約フォームに入力させる勧誘に引き続き、実質的にその場で申込みを受けたといえるなら、通信販売ではなく訪問販売です(通達)勧誘と申込みを、時間的にも場所的にも切り離す

当てはまるかは、勧誘の経緯と契約を結んだ場所の事実で決まります。

お客様の請求による訪問(請求訪問)は、通達が狭く考えています。ネイルで特に注意したいのは広告の価格です。事業者が安い価格だけを広告し、お客様がそれを見て訪問を依頼したのに、実際の請求額に相当の開きがあった場合は、実際の金額で契約する明確な意思を示したとはいえず、請求に当たらないことがあります。「出張ネイル3,000円〜」と載せながら、出張費や最低料金で大きく上がる見せ方は、請求訪問の整理まで崩します。なお、現金取引で総額が3,000円未満のときはクーリング・オフが適用されない例外がありますが(特商法26条5項3号。金額は政令で定められています)、出張費を含めればこの額を超えるのが普通なので、前提にしません。

お客様宅で契約を結ぶとき、何をしなければならないか

訪問販売に当たる場合の主な条文(特商法)

  • 3条勧誘に先立って、氏名または名称、勧誘が目的であること、役務の種類を明らかにする
  • 3条の2契約しない意思を示した人への勧誘の禁止
  • 4条・5条申込みを受けたとき、契約を結んだときに、法定の事項を記載した書面を渡す
  • 9条書面を受け取った日から8日間、書面または電磁的記録でクーリング・オフができる
  • 9条の2通常必要とされる分量を著しく超える契約の撤回・解除
  • 9条の3不実告知などで誤認した契約の取消し
  • 10条解除に伴う損害賠償・違約金の額の上限

解釈は、消費者庁と経済産業省の通達(令和6年11月19日付け)の記載によります。

名乗り方では、屋号だけでは足りません。通達は、個人事業者なら戸籍上の氏名または商業登記簿の商号、法人なら登記簿上の名称を告げる必要があり、通称だけでは「氏名又は名称」を告げたことにならないとしています。住居の訪問では、基本的にインターホンで開口一番に告げます。お客様宅で新しい契約を勧めるなら、屋号に加えて本名または登記上の名称を告げます。断られたらそこで終えます。お客様が退去を求めたのに退去せず、困惑して結んだ契約は、消費者契約法4条3項1号で取り消せます。

書面を渡していなければ、通達によれば、8日間の起算日が来ず、クーリング・オフできる期間が続きます。クーリング・オフに関する記載事項が足りない書面も、法定の書面と認められません。「特別な契約なのでクーリング・オフはできません」と事実と異なる説明をして誤認させた場合は、8日が過ぎていても、改めて書面を渡して説明するまでクーリング・オフを行使できます(特商法9条1項ただし書)。

訪問販売の契約が解除されたとき、請求できる額には上限があります(特商法10条)。通達によれば、提供の開始前の解除では、契約の締結や履行のために通常要する費用が基準で、その契約のために特別に費用をかけてもそのまま請求できません。お客様宅で契約する可能性があるなら、規約に「訪問販売に当たるときは、特商法の定める額を超えて請求しない」と一項を入れます。

回数券は、通常必要とされる分量を著しく超えると撤回や解除の対象になり(特商法9条の2)、「今契約しないと値上がりする」などの事実と異なる説明は取消しの対象です(同9条の3、消費者契約法4条1項1号)。回数券の組み立てはネイルの回数券・コース契約書のページにあります。

お客様宅で契約を結ぶ運用にするときの手順

  1. 訪問の経緯を残すお客様から、どの方法で、いつ、何の契約を求められて訪問するのかを、予約の申込み内容やLINEの履歴に残します。こちらから勧めて訪問した場合は、請求訪問を前提にしません。
  2. 勧誘の前に名乗る本名または登記上の名称、契約の勧誘をすること、契約の種類を告げます。
  3. 勧誘と申込みを分けるお客様宅では説明にとどめ、申込みは後日、お客様自身の端末で行ってもらいます。勧誘に引き続きその場で入力させる形は、訪問販売とされます。
  4. その場で契約するなら書面を渡すクーリング・オフの記載を含む書面をその場で渡して説明します。電子メールなどで渡す場合は、電磁的方法で提供するための事前の承諾の取り方にも決まりがあります。
  5. 断られたら終える契約しない意思を示されたら、重ねて勧めません。担当者にも徹底します。

任意のクーリング・オフを全員に付けておく考え方は、前日に申込んで翌日に施術する短いサイクルでは勧められません。前日キャンセルは50%、「クーリング・オフします」なら全額返金と、二つの制度が衝突し、キャンセル規定が働かなくなります。規約に書くときも「請求による訪問のため対象外です」と断定せず、「訪問販売に当たる場合は、書面を受け取った日から8日間は撤回や解除ができます」と条件つきで書きます。

お客様宅での事故と、責任の置き方

お客様宅で起きやすいことと、備え

場面起きること備え
床・家具の汚損ジェルやリムーバーが付き、跡が残ることがある。施術前の傷との区別がつかなくなる養生シートと台を持参し、施術前に場所を一緒に確認して、同意を得て写真に残す
ペット・子ども材料に触れる、容器を倒す、ペットが咬む、脱走する施術中は別室で管理してもらう。薬剤は手の届かない場所に置く
貴重品の紛失・盗難の疑い施術後に物がなくなったと言われ、出入りした施術者が疑われる貴重品を施術場所に置かない。施術者は施術場所以外の部屋に入らない
同席者・来客家族や来客が施術者に不適切な言動をする施術者に、中止して退室できる権限を与える
体調の急変・肌のトラブル施術中のめまい、後日の肌荒れの訴え同意書と記録を整える。救急要請と連絡の手順を決める

体調の申告や通常想定される反応の説明は、施術同意書の作り方のページにあります。

サロンの責任は、契約上の義務を果たさなかったことによる責任(債務不履行、民法415条)と、過失による不法行為の責任(同709条)が中心です。スタッフの行為は使用者責任(同715条)の問題にもなり、雇用か業務委託かという契約書の名前だけでは決まらず、実態で見られます。「担当者は個人事業者なので責任はその人だけ」と書いても、お客様に対する責任は消えません。

消費者契約法の要点

  • 8条1項1号・3号責任の全部を免除する条項、責任の有無を事業者が決める条項は無効
  • 8条1項2号・4号故意または重大な過失による場合に、責任の一部を免除する条項は無効
  • 8条3項一部免除の条項は、軽過失にのみ適用されることを明らかにしていないと無効
  • 10条信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項は無効

上限を設けるなら、軽過失の場合にだけ適用されることを、上限を定めるその一文の中で明らかにします。人身損害は上限の外に出しておくと、条項全体の有効性を守りやすくなります(実務上の工夫です)。お客様側の責任を「故意または過失の有無を問わず一切」と重くする書き方は、10条の検討対象になります。申告義務違反も全部免責にせず、お客様の過失を賠償額に反映させる過失相殺(民法418条、722条2項)で調整します。

お客様宅で事故が起きたときの手順

  1. 施術を止め、安全を確保するけがや体調の急変があれば直ちに中止し、必要なら救急要請をします。
  2. お客様と状況を確認するどの物が、どの程度、どの状況で壊れたかを一緒に確認し、写真を撮ってよいか尋ねます。
  3. その場で責任や金額を約束しない原因と責任の判断はサロンの責任者が行います。現場の担当者が賠償額を約束すると、サロンの知らない契約変更になります。
  4. 速やかに報告し、記録を残す日時、場所、状況、写真、連絡の履歴を報告します。保険会社への事故報告に期限がある場合があり、記録は解決まで消去しません。

保険との突き合わせも欠かせません。

  • 店舗向けの施設賠償責任保険の「施設」が、店舗だけか、出張先の業務まで含むか
  • 家財の損害、預かった物の紛失、盗難の疑いが、補償の対象か。被保険者は法人か個人か、業務委託の担当者を含むか
  • 規約の上限額が保険の支払限度額より低いと、保険で払える損害まで規約が封じる。付保額は賠償責任の上限でない旨も書く
  • 法律上の責任がなくても支払われる見舞金の枠があれば、規約に定めを置き、過失の有無での揉め事を減らす

出張費・キャンセル・不在の決め方

料金は「施術料金」「出張費」「実費」に分けます。「交通費実費+1,000円(交通費込み)」のように、加えるのか含むのか読めない表示は、争いの原因です。消費者向けの価格は税込の総額で示し(消費税法63条)、予約を承諾する時点で合計額を知らせます。ネット予約の広告(特商法11条)にも、出張費や駐車場代を表示します。

  • 出張費はエリアや距離で段階を作り、範囲は市区町村や地図で示す
  • 駐車場は、お客様が用意するか、近隣のコインパーキングの実費を請求するかを決める
  • 一人だけの施術でも移動の時間がかかるため、最低料金を決める。移動時間をどこから数えるか、施術時間に準備と片付けを含めるかも明記する
  • 割増が二つ重なるときは、加算か乗算かを計算式で書く

割増の重なり方の違い(金額は説明のための仮の数字)

  • 通常の施術料金(税込)9,000円9,000円
  • 夜間割増20%と繁忙期割増20%を足す9,000円 × (1 + 0.2 + 0.2)12,600円
  • 二つの割増を掛け合わせる9,000円 × 1.2 × 1.212,960円

キャンセル料の基本はネイルサロンのキャンセル料と無断キャンセル・お直し保証のページにあります。出張では、出発前と到着後でサロンの損害が違い、移動の費用が加わります。到着してもお客様が応答しないとき、いつまで待って中止とするかも決めておきます。サロンの都合や、台風・交通機関の途絶のような不可抗力で行けないときは、キャンセル料を取らず、振替か返金とし、返金の振込手数料はサロンが負担します。

出張のキャンセル料の組み立て例(割合は仮の数字)

  • 施術料金9,000円、出張費1,100円(ともに税込)
  • 前日(出発の準備前)9,000円 × 50%4,500円
  • 当日、出発前9,000円 × 70%6,300円
  • 到着後に不在・応答なし9,000円 × 100% + 出張費1,100円10,100円

消費者契約法9条1項1号は、平均的な損害の額を超える部分を無効とし、説明を求められたら算定根拠の概要を説明する努力義務があります(同条2項)。割合は、拘束した時間と移動の費用から積算して決めます。お客様宅で結んだ契約には、特商法10条の上限も重なります。

ホテル・会場へ出向くとき、担当ネイリストと結ぶとき

ホテル・会場との提携契約で決める項目

項目決めること注意点
代金と手数料代金の受領者、手数料の率と精算の時期、取消料や追加メニューへの適用対象を決めないと、精算のたびに食い違う
施術の場所客室や会場のどこで施術するか、養生、備品の使用備品を使わず、タオルやシートは持参する
禁止事項施術と関係のない営業、物販、勧誘の禁止客室で新しい契約を勧めない取り決めは、訪問販売の問題を避けやすい
損害の報告汚損・損傷をいつまでに誰が報告し、誰が負担するか報告期限を過ぎたら一切責任なし、という短い失権の定めは争いになる
競業の制限提携期間中に他施設と提携することの制限地域と形態を限定する

手数料の精算の例(割合・金額は仮の数字)

  • 宿泊客から受け取る料金(税込)11,000円11,000円
  • 手数料15%11,000円 × 0.15 = 1,650円取り分 9,350円
  • 取消料5,500円にも手数料をかける定めの場合5,500円 × 0.15 = 825円取り分 4,675円

申込む人と施術を受ける人が違う場面(母親が娘のために、家族が高齢の親のために申込む)では、契約者と施術を受ける人の欄を分けます。体調の申告と同意は本人から取り、病歴などの要配慮個人情報は、あらかじめ本人の同意を得て取得します(個人情報保護法20条2項)。未成年者の契約は、法定代理人の同意がなければ取り消せます(民法5条1項・2項。成年年齢は18歳、同4条)。

担当ネイリストとの契約では、店内限定の「サロン外での業務を行ってはならない」型の条項を、出張の可否と条件を定める条項に作り替えます。全体像はネイリストとの業務委託契約書・秘密保持契約書のページにあります。出張で加わる項目は次のとおりです。

出張担当のネイリストの契約で加える項目

項目決めること
移動と補償移動時間を報酬に含めるか、交通費・駐車場代の負担、サロン都合のキャンセル時の補償(稼働日・欠勤・最低報酬保証と整合させる)
安全安全が確保できないときは、サロンに連絡のうえ中止・退室でき、不利益に扱わない
訪問先での契約料金、割引、キャンセル料の減免などの決定はサロンに専属し、担当者は訪問先で契約を勧誘しない
直接取引訪問先で連絡先を交換して次回から直接受ける行為の禁止。損害額を予定するなら過大にしない
事故と情報事故の速やかな報告、保険会社への報告、訪問先の住所は当日に必要な範囲で渡し、終了後は削除(個人情報保護法22条・23条・25条)

個人への業務委託は、フリーランス法の対象になりえます。給付の内容、報酬の額、支払期日などを直ちに明示し(同法3条)、従業員を使用する事業者などには、1か月以上の委託での禁止行為(同法5条)と、継続的な委託の解除の30日前予告(同法16条1項)が定められています。雇用の場合は、違約金や損害賠償額の予定が禁じられます(労働基準法16条)。雇用か業務委託かはサロンスタッフを雇用から業務委託に切り替えるときのページのとおり、実態で見ます。

よくある失敗と直し方

出張の書類でよく見かける書き方と、整えた書き方

事故の責任

変更前お客様宅での事故・破損・紛失について、当店は一切責任を負いません
変更後当店の過失により家財を損傷し、またはお客様に損害を与えたときは、当店が賠償します。お客様の申告漏れは過失相殺で調整します

全部免除は消費者契約法8条1項1号・3号で無効です

賠償の上限

変更前賠償は当日の施術料金を上限とし、当店に重大な過失がある場合に限り責任を負います
変更後当店、その代表者またはその使用する者の故意または重大な過失による場合を除き、1事故につき○○円を上限とします。人身損害には適用しません

「重大な過失がある場合に限り」は軽過失の全部免除です。上限は、軽過失にのみ適用されると一文の中で明らかにします(8条3項)

クーリング・オフ

変更前お客様宅での契約は、請求による訪問のため、クーリング・オフの対象外です
変更後この契約が訪問販売に当たる場合は、書面を受け取った日から8日間は撤回や解除ができます

請求に当たるかは事実で決まります。断定すると誤認を招きます

お客様宅での勧誘

変更前施術中に、今日申込めば割引になる回数券を勧め、書面なしで署名してもらう。名乗りは屋号のみ
変更後お客様宅では説明にとどめ、申込みは後日、予約ページから行ってもらう。その場で契約するなら、本名または登記上の名称を名乗り、書面を渡す

書面を渡していなければ、クーリング・オフの期間が始まらず、いつまでも解除されうる状態が続きます

出張費の表示

変更前出張ネイル3,000円〜。出張費は交通費実費+1,000円(交通費込み)
変更後施術料金、出張費(エリア別の表)、駐車場代の実費を分けて、税込の総額で示す。予約を承諾する時点で合計額を知らせる

加えるのか含むのか読めない表示は争いの原因で、安い料金だけの表示は請求訪問の整理も崩します

貴重品

変更前貴重品の管理はお客様の責任とします
変更後貴重品は施術場所から離れた所で管理していただく。スタッフが故意または過失で紛失・損傷させたときは、当店が責任を負う

お客様の責任と書くだけでは、スタッフによる紛失の責任は消えません。両方を書いておきます

到着後のキャンセル

変更前お客様不在の場合は、いかなる理由でも全額を請求します
変更後待機時間と段階ごとの割合を決め、サロンの都合や不可抗力は料金を取らず振替か返金とします

平均的な損害を超える部分は無効です(9条1項1号)

ヒヤリングで確認すること

出張の書類を作る前に、確認しておきたい問い

  1. お客様は、どの方法で申込みますか。お客様宅で回数券や物販を勧める予定はありますか。申込みを受ける場所で、通信販売か訪問販売かが分かれます。勧める予定があるなら、書面とクーリング・オフを前提にするか、申込みを後日に切り離すかを決めます。
  2. こちらから訪問を持ちかける形(体験会、お試し)はありますか。事業者から持ちかけた訪問は請求訪問に当たらず、その場の申込みには訪問販売の規制がかかります。
  3. 広告の料金に、出張費、駐車場代、最低料金は含まれていますか。広告の価格と実際の請求額に開きがあると、表示の問題と、請求訪問の整理の崩れにつながります。
  4. お客様宅に同席するのは誰ですか。子ども、ペット、家族はいますか。施術する部屋、薬剤の置き場所、中止の条件を決める前提です。
  5. 加入している保険は、出張先の業務、家財の損害、盗難を対象にしていますか。規約の上限、見舞金、事故報告の手順を、保険の内容に合わせます。
  6. 担当者は従業員ですか、業務委託ですか。一人で訪問しますか。契約書の条項、フリーランス法や労働基準法の確認、中止権限の置き方が変わります。
  7. 施術前の室内や爪の写真を撮りますか。何に使い、どれだけ保管しますか。他人の住居が写るため、利用目的の特定と通知・公表(個人情報保護法17条1項、21条1項)と撮影の同意が要ります。

出張施術特約の条文例と、出張で起きがちなこと

出張施術特約(消費者向け・例)

第1条

この特約は、当サロンがお客様のご自宅その他、店舗以外の場所(以下「訪問先」といいます。)で行う施術に適用されます。定めのない事項は、利用規約によります。

第2条

出張施術のお申込みは、当サロンの予約ページ、公式LINE、電話で受け付けます。契約は、当サロンが予約を承諾した時に成立します。当サロンは、訪問先で新たな契約のお申込みを受けません。回数券その他の追加のご契約は、後日、前記の方法でお申込みいただきます。

第3条

料金は、施術料金、出張費、駐車場代の実費の合計とし、すべて消費税及び地方消費税を含む総額でお示しします。予約を承諾する時に、合計額をお知らせします。

第4条

当サロンは、養生シートを持参して施術場所を保護します。施術の前に、施術場所と傷や汚れのある箇所をお客様と一緒に確認し、お客様の同意を得て、写真に記録することがあります。

第5条

お客様は、お子様やペットが機材や薬剤に触れないよう管理し、現金、貴金属その他の貴重品を、施術場所から離れた所で管理してください。当サロンのスタッフは、お手洗いをお借りする場合を除き、施術場所以外の部屋に立ち入りません。

第6条

スタッフは、安全が確保できないと判断したとき、お客様または同席者の言動により施術の続行が困難になったとき、皮膚や爪の状態から施術が適さないと判断したときは、当サロンに連絡のうえ、施術を中止し、退室することができます。

第7条

訪問先に到着した後、お客様と連絡がつかない場合は、到着から○分待機したうえで施術を取りやめます。キャンセル等の場合の料金は別表のとおりです。ただし、別表の金額は、当サロンに生ずべき平均的な損害の額を超える部分には適用せず、お客様から求められたときは、算定の根拠の概要をご説明します。

第8条

台風、交通機関の途絶その他、当サロンの責めに帰することができない事由、または当サロンの事情により出張施術ができなくなったときは、キャンセル料をいただかず、他の日への振替または返金をします。返金の振込手数料は、当サロンが負担します。

第9条

当サロンの過失により、訪問先の家財を損傷し、またはお客様に損害を与えたときは、当サロンが賠償します。当サロン、その代表者またはその使用する者の故意または重大な過失による場合を除き、賠償額は1事故につき○○円を上限とします。ただし、お客様の生命または身体に生じた損害には、この上限を適用しません。当サロンが加入する保険の保険金額は、賠償責任の上限を意味しません。

第10条

この契約が、特定商取引に関する法律にいう訪問販売に当たるときは、同法の定めるところにより、書面を受け取った日から8日間は、申込みの撤回または契約の解除ができます。この場合、当サロンは、同法の定める額を超える損害賠償または違約金を請求しません。

第2条は、お客様宅で契約を結ばない運用が前提です。当日の追加アートが訪問販売の書面の対象になるかは、金額と支払方法も含めて個別に見るため、追加の選択肢は予約の段階で選べる形にしておくと運用が単純になります。

よくあるご質問

出張ネイルは、訪問販売になりますか。

出張で施術することだけでは、訪問販売になりません。訪問販売かどうかは、契約の申込みを受け、契約を結んだ場所で決まります。予約ページやLINEで申込みを受け、お客様宅では施術だけを行うなら、通常は通信販売の側です。お客様宅で回数券や追加のメニューを勧めて契約を結ぶと、訪問販売に当たりえて、書面の交付と8日間のクーリング・オフが前提になります。

お客様から呼ばれて自宅に行く場合は、クーリング・オフは要りませんか。

お客様が自分の住居での契約の申込みや締結を明確に求めた場合は、書面やクーリング・オフなどが適用されない扱いがあります(特商法26条6項1号)。ただし、問合せや見積りの依頼に、こちらから訪問を申し出た場合は、請求に当たらないと通達に書かれています。予約した施術とは別に、お客様宅で回数券などを勧めて結ぶ契約も、請求に当たるとは限りません。氏名等の明示と再勧誘の禁止は、請求訪問でも適用されます。

お客様宅の床や家具を傷つけたときの責任は、規約で「一切負わない」と書けますか。

お客様が消費者の場合、責任の全部を免除する条項は無効です(消費者契約法8条1項1号・3号)。上限は設けられますが、軽過失にのみ適用されることを、上限を定める一文の中で明らかにする必要があります(同条3項)。サロン、その代表者、使用する者の故意または重大な過失による場合は上限の外に出し、人身損害にも上限を適用しない書き方が、条項の有効性を守りやすくします。

お客様が不在で、到着しても応答がありません。キャンセル料は取れますか。

取ること自体はできますが、平均的な損害を超える部分は無効になります(消費者契約法9条1項1号)。到着後の不在について、待機時間、施術料金の割合、出張費の実費をあらかじめ規約に定め、拘束した時間や移動の費用から積算した根拠を社内の文書として準備しておくことが前提です。お客様から求められたときは、算定根拠の概要を説明する努力義務があります(同条2項)。

業務委託のネイリストを出張に行かせるとき、契約書に何を足しますか。

出張の可否と範囲、移動時間と交通費の扱い、サロンの都合でキャンセルしたときの補償、安全が確保できないときの中止と退室の権限、訪問先で契約条件を決めないこと、お客様宅で契約を勧誘しないこと、直接取引の禁止、事故の報告と保険の扱い、訪問先の情報の取扱いを足します。個人への委託は、フリーランス法の明示の義務(同法3条)なども確認し、雇用との区別は実態で見ます。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。個別の店舗への当てはめは、提供するメニュー、スタッフの働き方、お客様が事業者か個人かなどによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者契約法(消費者庁) / 公正取引委員会 フリーランス法 / 個人情報保護委員会 / 厚生労働省 / 国民生活センター / 小規模事業者持続化補助金(商工会地区の事務局) / 同(商工会議所地区の事務局)

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