ネイル検定・認定講師資格と、スクール以外のオンラインレッスン・動画販売の契約

検定の合否、自校の認定、認定講師の権限、動画を売る権利を別々に書き分けることが、ネイルの教える仕事の契約書の出発点です。

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このページの要点

  • 外部の検定の合否は実施団体が決めるため、スクールは合格を約束せず、修了証や認定の意味を別に書く。
  • 認定講師には「指導」を定義し、認定なしでできること、認定でできること、できないことを三つに分けて規約に書く。
  • オンラインレッスンのキャンセルは時期別に区分し、平均的な損害から説明できる額にして、録画の扱いも決める。
  • 動画を販売するときは、音楽、モデルの手、教材の画像、編集の外注など、権利のないものが入っていないかを撮影前に確認する。

結論:「検定の合否」「自校の認定」「講師として教える権限」「動画を売る権利」は、別々に書く

結論

ネイルの技術を教える仕事では、四つのものが混ざりやすくなります。外部の団体が行う検定の合否、自校が出す修了や認定、認定講師として人に教える権限、そして自作の動画やオンラインレッスンを売る権利です。四つを一つの「資格」という言葉でまとめて書くと、受講生は検定に通る資格だと受け取り、卒業生は動画を売ってよいと受け取ります。契約書と規約では、何を証明し、何を許し、何を許さないかを、それぞれ別の条項で書き分けます。

ネイルスクールを開く、卒業生に講師として活動してもらう、あるいは自分のレッスンをオンラインで販売する。どの場面でも、書類に書くことは「誰が何を判断するのか」と「誰の何を使ってよいのか」に集約されます。検定は実施団体が合否を決めます。修了と認定は自校が決めます。教材や動画の権利は、作った人が持ちます。この三つの線がずれると、受講生からは「合格を約束された」という苦情が、卒業生からは「教える自由を奪われた」という反発が、運営側からは「教材を持ち出された」という不満が出ます。

スクールの契約書一式、返金、分割払い、卒業後の開業制限はネイリスト育成講座(ネイルスクール)の契約書一式で扱っています。このページは、その先の論点に絞ります。検定と認定の表示の書き方、認定講師に許す範囲と更新・取消し、スクールの外で行うオンラインレッスンの受講契約、動画を販売するときの権利処理です。

外部の検定と、自校の認定は何が違うのか

結論から言うと、外部の検定は実施団体が合否を決めるもので、スクールや講師は合否を約束できません。一方、修了証や認定は自校が基準を決めて出すもので、基準と意味を自校が説明する責任があります。この違いを表示に出さないと、受講生の誤解が契約上の問題になります。

四つの「資格らしいもの」の違い

種類誰が決めるか何を意味するか契約書・規約での書き方
外部団体の検定検定の実施団体実施団体が定めた基準で合格した事実スクールは対策の指導を行うこと、合否は実施団体が判断すること、受験料と申込みは別であることを書く
自校の修了自校自校のカリキュラムを所定の要件で終えた事実出席率、課題、確認テストなどの要件を客観的に書く。修了は技術の保証や講師資格を意味しないと書く
自校の認定(技術者)自校自校の基準で技術を確認した事実基準、審査者、再審査の有無、有効期間の有無を書く。名称を使える範囲を別に定める
自校の認定講師自校自校の方法で人に教えることを許した事実指導できる範囲、教材の使い方、更新、停止、取消しを定めた規約に同意した人にだけ付与する

同じ言葉でも、団体や学校によって意味が違います。契約書の中で、その言葉が何を指すかを最初に定義します。

表示の誤りは、最初に募集ページや説明会の場面で起きます。消費者契約法は、事業者が重要事項について事実と異なることを告げ、それによって消費者が誤認して契約したときは、契約の申込みを取り消せると定めています(4条1項1号)。有利になることだけを告げて、不利になる事実を故意または重大な過失で告げなかったときも、取消しの対象になります(4条2項)。また、実際よりも優れていると示す表示は、景品表示法が禁じる優良誤認表示にもなり得ます。

募集・説明会の表示を書き直す

検定対策講座

変更前「この講座を受ければ検定に合格できます」
変更後「検定の出題範囲に沿った対策を行います。合否は検定の実施団体が判断します。受験料と申込みは別に必要です」

スクールが決められない合否を断定すると、事実と異なる説明になる

修了証

変更前「修了すればプロのネイリストとして認められます」
変更後「所定の要件を満たした方に修了証を出します。修了証は当校の修了を示すもので、検定の合格や講師資格を意味しません」

資格の意味を取り違えた受講生の苦情を防ぐ

認定講師の勧誘

変更前「認定講師になれば、講師の仕事が増えて収入が安定します」
変更後「認定講師になっても、仕事の紹介や収入は保証しません。当校から講師の仕事を発注するかどうかは、別の契約で決めます」

仕事の提供を示して高額の費用を払わせる形に見えると、別の規制の検討が必要になる

合格者の声

変更前合格した人の体験談だけを大きく載せる
変更後「受講者全体の合格率は○%(集計の期間と対象を明記)」を併記する

一部の例だけを一般的な結果のように見せると、誤認を招く

認定講師になれば仕事がある、という説明は、特定商取引法の業務提供誘引販売取引に当たるかどうかの検討が必要になる場面があります。勧誘の文言と、講師報酬の有無を先に確認します。

検定の受験料を受講料に含める場合は、含まれる受験の回数、再受験の費用、申込みを誰が行うかを書きます。受験料の返金は実施団体の定めに従うため、「実施団体の規定による」と書く方法が現実的です。

講座の中でネイルモニターや施術のモデルを使う場面はネイルモニターの契約とSNS集客、実習で施術を受ける人の同意は施術同意書の作り方で説明しています。

認定講師には何を許し、何を許さないか:指導の範囲、更新、取消し

認定講師の規約でいちばん争いになるのは、「教えてよい範囲」です。結論として、規約では「指導」を定義し、認定がなくてもできること、認定があればできること、認定があってもできないことの三つに分けて書きます。この分け方をしないと、卒業生がSNSで技法を紹介しただけで違反だと言われたり、逆に、運営側が止めたい講師養成の開講を止められなかったりします。

「指導」の定義(例)

第1項

この規約で「指導」とは、当校の技法の体系または教授法を用いて、第三者に技術または知識を習得させるために行うレッスン、講座、ワークショップその他の教える行為をいい、有償か無償かを問いません。

第2項

自らの施術のために技法を用いること、技法についての感想や体験を投稿すること、受講生同士が非公開で復習のために教え合うことは、指導に当たりません。

第3項

技法を体系的に再現できる手順や教材を示す場合は、名称の使用の有無にかかわらず、指導として扱います。

「名称を使わなければよい」「無料なら指導ではない」という解釈を最初に防ぐ書き方です。

認定の有無による線引き(例)

場面認定がなくてもできる認定があればできる認定があってもできない
自分のサロンでの施術学んだ技法を使う同じ(制限しない)
SNSでの発信感想、体験、公開されている内容の出典つき紹介事前に承諾を得た解説動画教材の図や動画の転載、非公開の内容の公開
自分の教室でのレッスン自分の技法として教える範囲認定名称を表示して教える認定講座や資格講座そのものを独自に開く
教材の利用受講生本人の学習指導中の再生、決められた範囲での配布動画やファイルを生徒に渡す、アクセス情報の共有
人を育てる活動(できない)アシスタントとして準備や受付を任せる講師の養成、認定の付与、上位コースの開講

右端の列を最初から書いておくと、卒業生に「何が禁止か」を事前に示せます。認定の付与は運営側だけが行うと明記します。

教材を教室やワークショップで教育目的に使うことは営利目的でも許し、同一または類似の認定講座や資格取得型の講座を独自に開催することだけを禁止する、という整理は実務で見られます。営利目的を一律に禁止すると、認定講師の生計が成り立たず、制度の魅力が失われます。

卒業後に、スクール事業そのものを制限したい場合は、期間、地域、禁止する行為の三つを具体的に書かないと、過大な制限として効力が争われやすくなります。同じ技術を使うサロン営業まで止める書き方は、受講の目的と矛盾します。守りたいのは技法そのものではなく、教材、カリキュラム、認定の名称と仕組みだと整理して、その範囲に絞ります。技法や考え方そのものには、著作権のような排他的な権利は認められにくいため、契約で利用の条件を定め、名称は商標や不正競争防止法で守る、という組み合わせになります。他人の周知な商品等表示と紛らわしい名称を使って混同を生じさせる行為は、不正競争防止法2条1項1号の対象です。

有効期間と更新:認定は「取って終わり」ではない

認定講師の資格に有効期間を設けるなら、期間、更新の要件、更新を忘れたときの扱いを定めます。更新の要件としては、年間の継続学習の時間、更新料や年会費、規約の再同意などがあります。ここで見落とされやすいのが、「試験に合格したが、ライセンス契約や更新の手続が終わっていない」状態の扱いです。この間に認定講師と名乗れるのかを書いていないと、合格直後の講師が名称を使い、後から問題になります。合格と効力の発生は別だと、規約に書いておきます。

規約を後から変えるときは、定型約款の変更の要件(民法548条の4)に沿って、効力発生時期を定め、変更の内容と効力発生時期を適切な方法で周知します。周知が効力発生時期までに終わらなければ、合理性が必要な変更は効力を生じません(同条3項)。

停止と取消し:すぐに外す前に、手順を決める

SNSで問題のある発言をした講師を、即日で取り消したくなる場面はあります。ただ、手順を決めていない取消しは、恣意的だと争われます。実務では、原則として是正と説明の機会を与え、緊急の場合だけ暫定的に名称の使用を止める、という二段で書く方法があります。取消しの後は、名称、ロゴ、認定証の表示をいつまでに削除するか、削除すべき媒体は何か、過去の投稿は全部消すのか、を定めます。

停止・取消しと表示の削除(例)

第1項

当校は、認定講師が規約に違反したと認めるときは、違反の内容を書面または電子メールで通知し、○日以内に是正と説明をするよう求めます。ただし、受講生や第三者に重大な被害が及ぶおそれがあるときは、通知と同時に、名称の使用と指導を暫定的に停止することがあります。

第2項

是正がなされないとき、または是正が困難なときは、当校は認定を取り消すことができます。取り消すときは、理由を示して通知します。

第3項

認定が終了した日から、認定講師は、指導を停止し、名称およびロゴの使用と新規の募集をやめます。ウェブサイト、予約ページ、SNSのプロフィールとアカウント名、オンライン会議の表示名は、終了の日から○日以内に削除または修正します。過去の投稿の本文は、タイトルや概要欄を除き、一律の削除を求めません。

第4項

認定が終了した場合でも、認定講師は、自己の生徒に対し、次回の指導予定日までに、指導を続けられなくなったことを伝え、自己の契約に従って振替または返金をします。

第3項の日数は、新しく使ってよい期間ではなく、削除の作業に要する期間であることを、規約の中で明らかにします。

違約金を置くなら、受講契約全体ではなく認定講師の規約に独立した条項として置くほうが、制度の規約だけを単独で改定できます。研修費用の返還や違約金の考え方はサロンの研修費・講習費の返還と特待生制度で、辞める人との関係はネイリストが辞めるときの手続で扱っています。

スクールの外で、卒業生や認定講師がオンラインレッスンを売るときの受講契約

結論として、オンラインレッスンの受講契約は、「何回、何分、いつまで、何を渡すか」を数字で書き、キャンセルは時期別に区分して平均的な損害から説明できる額にし、録画と撮影の扱いは、講師側と受講者側の両方の規律として書きます。講師が個人でも、受講者が一般の消費者であれば、消費者契約法の規律を受けます(2条1項・2項・3項)。

まず、特定商取引法の特定継続的役務提供は、エステ、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介の7つに限られます。ネイルの技術を教えるレッスンは、この7つのどれにも当たらないと整理するのが一般的です。そのため法定のクーリング・オフや中途解約の制度はありませんが、そのことは、返金を一切しなくてよいという意味ではありません。消費者契約法が、返金条項の効力を審査します。ネットで申込みを受けるなら、通信販売の表示事項も整える必要があります(ネイルサロンの利用規約・プライバシーポリシー・特商法表記)。

オンラインレッスンの受講契約に入れる項目

  • コースの内容:回数、1回の時間、実施の手段、受講の期間(いつまでに使い切るか)
  • 契約の成立時点:申込みの受付だけでなく、入金確認か、確定の連絡をした時点かを書く
  • 送付物:キット、教材、見本チップの内容と発送の時期。開封後の扱い
  • 日程の変更:受講者側の変更の締切と回数、講師側の都合で変更するときの代替日程
  • 通信障害:回線やアプリの不具合で実施できなかった回の扱い(再実施か、返金か)
  • 録画:講師が録画を渡すのか、渡す場合の期間と共有の禁止。受講者が録画してよいか
  • 受講者の映り込み:画面に映る受講者の顔や手、自宅の背景を、講師がどう扱うか
  • 未成年の受講者:親権者の同意の取り方(民法5条)と、請求先
  • 受講者の事業性:すでに事業として営む人か、これから開業する人か(消費者かどうかに影響する)

未成年の受講者は、法定代理人の同意がなければ、契約を取り消せます(民法5条1項・2項)。成年年齢は18歳です(民法4条)。申込みの時点で年齢を確認し、18歳未満は保護者の同意を得た人に限る、と書く方法が一般的です。

キャンセル料は、時期別に区分して、根拠を説明できる額にする

受講料の返金は、キャンセルの時期で区分します。消費者契約法9条1項1号は、解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金が、設定した解除の事由や時期などの区分に応じて、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるときは、超える部分を無効とします。オンラインレッスンでは、枠を他の人に売れる期間、準備した教材、すでに発送した送付物が、損害の中身です。

キャンセルの区分の設計例(金額は仮の例です。実際は自分の費用から出します)

  • 受講料60,000円、レッスン開始の14日前まで送付物を発送前なら、振込手数料などの実費のみ返金額の例:60,000円から実費を引いた額
  • 開始の13日前から前日まで送付物の実費と、準備にかかった費用を差し引く。枠が埋まりにくい程度に応じた割合も考慮差引の例:送付物2,000円+手数料の割合
  • 開始当日、連絡なしの欠席当日の割合に準じる。ただし、受講料の全額を超えない返金なしとする場合も、理由を説明できること

受講開始後の途中解約は、提供済みのレッスンの対価と、未提供の部分に応じた精算を考えます。「開始後は理由を問わず全額」とする設計は、争われやすい部分です。説明を求められたときに、算定の根拠の概要を説明するよう努める義務があります(消費者契約法9条2項)。

未払いの遅延損害金は、未払額に年14.6%を乗じた額を超える部分が無効になります(9条1項2号)。

レッスンを録画するとき

講師の話した内容は、講演などと同じく言語の著作物になり得ます(著作権法10条1項1号)。受講者が無断で録画して配ったり、アーカイブを他人に見せたりすれば、複製権(21条)や公衆送信権(23条)の問題が生じます。一方、受講者が個人的に復習するための録画は、私的使用のための複製として許される範囲があります(30条)。そこで、規約では、録画を禁止するのか、復習用に限って許すのかを決め、許す場合は、共有、投稿、販売、第三者への提供を禁止すると書きます。

受講者の顔や手、自宅の背景が映る録画を残すなら、受講者の同意が必要です。宣伝に使うなら、受講とは別の任意の同意として取ります。

録画と撮影の条文例(レッスン規約)

第1項

受講者は、レッスンの内容を、復習の目的に限り、自分のために録画することができます。録画したものを、第三者に提供し、インターネットに掲載し、または販売してはなりません。

第2項

講師は、レッスンを録画し、受講者の復習用として、受講期間の終了日まで視聴できる状態にすることがあります。録画の視聴用のURLやログイン情報を、第三者と共有してはなりません。

第3項

講師が、受講者の映った録画を、宣伝や教材に使うときは、受講者の事前の同意を得ます。同意をしなかったことで、受講者が不利益を受けることはありません。

第4項

受講者が使うことのできる録画の期間は、第2項の終了日までとし、終了後は視聴できなくなることがあります。ダウンロードして保存したものについて、講師は、回収の義務を負いません。

第4項のように、回収できないことを義務にしない書き方にしておくと、守れない約束を作らずに済みます。

施術動画・オンデマンド教材を販売するときの権利処理

結論として、動画を売るときは「誰の著作物が入っているか」を先に洗い出し、権利が自分にないものは外すか許諾を取ります。入っているのは、自分の話と映像だけではありません。音楽、テロップのフォント、素材の画像、教材の図、モデルの手や顔、スクールの本部から学んだ内容が入ることがあります。

販売する動画に入りがちなものと、確認すること

含まれるもの確認すること直し方の例
BGM・効果音販売や有料配信に使ってよい条件か。SNSの投稿用に用意された音源は、販売する動画には使えない場合がある販売用として許諾された音源に差し替える
フォント・素材画像商用の動画に使える条件か、クレジットの表示が必要か許諾の範囲を記録しておく
モデルの手・顔モデルの同意があるか。販売の期間と範囲を含むか撮影前に、動画の販売までを含む同意書を取る
本部やスクールの教材自作の動画に持ち込んでよいか。教材の図や手順の転載に承諾があるか自分の言葉と自分で撮った映像だけで作る。承諾が必要なものは書面を取る
他人の作品のデザイン作品をそのまま再現していないか。引用の範囲か引用は、公正な慣行に合い、目的上正当な範囲に限る(著作権法32条)
外部の出演者撮影・編集・配信の許諾と、実演の扱い出演契約で、利用の範囲と期間を決める

権利の確認は、撮影の後より前に行うほうが、撮り直しの費用がかかりません。

動画の権利は、作った側が持つのが原則です。自分で撮影し、編集し、自分の言葉で話した動画の著作権は、自分に帰属します(著作権法17条)。ただし、編集を外部の人に頼んだ場合は、完成した動画の権利がどちらに帰属するかを契約で決めておきます。権利を譲り受けるなら、翻案権(27条)や二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(28条)を含めて譲渡すると明記しないと、これらの権利は譲渡した側に留保されたものと推定されます(61条2項)。動画編集の外注は、受託者が個人の事業者のときは、フリーランス法の対象になり得ます。委託をしたときは、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面または電磁的方法で明示する義務があります(3条)。映像で構成される成果物の作成の委託は、情報成果物の作成委託に当たります(2条3項1号・4項2号)。

実演家の権利にも注意が必要です。出演者の氏名の表示について、実演家は氏名表示権を持ちます(著作権法90条の2)。名誉や声望を害する改変は、実演家の同一性保持権の問題になります(90条の3)。外部の講師が出る動画を編集するときは、編集で氏名を出すか出さないか、どこまで編集してよいかを、事前に書いておきます。

購入者に渡す権利:使ってよい範囲を書く

動画の購入者に渡すのは、動画の所有権ではなく、視聴する権利です。販売規約では、視聴の期間、視聴できる端末の数、禁止する行為、期間後の扱いを書きます。購入者が技法を覚えて自分のサロンで使うことは認め、動画を再配布することや、動画を使って同じ内容の講座を開くことは禁止する。この線引きが、販売規約の核心です。

動画販売の利用許諾(例)

第1項

購入者には、購入した動画を、購入者本人が学習する目的で、視聴期間内に視聴する、譲渡できない権利を許諾します。

第2項

購入者は、動画の全部または一部を、複製し、第三者に提供し、インターネットに掲載し、または販売してはなりません。視聴用のURLやログイン情報を共有してはなりません。

第3項

購入者が、動画で学んだ技法を、自分の施術に使うことは妨げません。動画を使って、同一または類似の内容の講座や動画を提供することは、当方の事前の書面による承諾がなければ、できません。

第4項

購入者は、動画の内容を、生成AIなどの機械学習の入力として使い、類似の教材を作成してはなりません。

第5項

施術の結果、効果、収入の増加を保証するものではありません。爪や皮膚に異常を感じたときは、施術を中止してください。

第4項は、動画を無断で学習用に使うことを防ぐ書き方です。禁止の範囲は、購入者の個人的な学習のための利用まで広げすぎないようにします。

通信販売の表示では、販売価格、代金の支払の時期と方法、販売の条件、返品に関する事項などを、広告に書く必要があります。動画は、視聴を始めた後は元に戻せないため、「視聴を開始した後の返金はできない」と書く運用が見られます。ただし、こうした書き方も、消費者契約法の審査を受けます。動画の販売ページには、視聴の前に確認できる内容(サンプル、収録の時間、対象のレベル)を示し、購入者が内容を確認してから申し込めるようにします。内容と異なるものを売ったときは、民法上の債務不履行の問題(415条)が残ります。

自分の免責は、書き方に限りがある

動画やレッスンの規約で、「当方は一切責任を負わない」と書きたくなる場面は多いのですが、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項は、無効です(消費者契約法8条1項1号)。当方、その代表者またはその使用する者の故意または重大な過失による債務不履行について、賠償責任の一部だけを免れさせる条項も無効です(同項2号。不法行為による損害の一部免除は同項4号)。損害賠償の上限を設けるなら、当方、その代表者またはその使用する者の故意または重大な過失による場合を除く、と、上限を定める一文の中に書きます(同条3項)。

よくある失敗と直し方

条項の書き方を直す

認定の意味

変更前「受講を修了した方に、○○クリエイターの認定を行い、ディプロマを発行します」とだけ書く
変更後「修了の認定は、当校の修了を示すものであり、講師資格を付与しません。講師資格を得るには、別の規約に同意し、別の審査に合格する必要があります」

修了と講師資格を分けないと、受講生が講師として教える権利を取得したと考える

返金

変更前「受講開始後は、理由を問わず、支払済みの受講料も未払の残額も全額を支払う」
変更後開始前の時期別の区分、開始後の提供済み分と未提供分の精算に組み替える

全額を負担させる設計は、消費者契約法9条1項1号と10条の問題が出やすい

解約の主体

変更前「乙は、申込完了後、解約および申込撤回をできない」(受講者である甲と取り違えた書き方)
変更後主語を受講者にそろえ、解約の可否と精算を条文で分ける

主語の取り違えは、意味が逆転し、効力の争いになる

競業の制限

変更前「実質的に同一または極めて類似した内容の講座の提供を禁止する」
変更後期間(例:修了後○年)、地域(例:日本国内)、禁止する行為(認定講座の開催、講師の養成、教材の複製)を列挙する

期間、地域、範囲がすべてないと、過大な制限として争われる

アーカイブ

変更前「アーカイブを視聴できます」とだけ書く
変更後視聴の期間、期間後に視聴できなくなること、ダウンロードした複製物の回収義務を負わないことを書く

期間を書かないと、いつまでも視聴できると受け取られる

免責

変更前「当校は、一切の責任を負わない」「受講者が被った損害は、受講者の自己責任とする」
変更後責任の上限を設けるなら、故意または重大な過失による場合を除く旨を、上限を定める一文の中に書く

責任の全部免除は、消費者契約法8条1項1号の問題が出る

ヒヤリングで確認すること

答えが決まっていないまま条文にすると、実際の運用と食い違います。

認定と検定の書類を作る前の問い

  1. 受講生に出すものは、修了証、認定、認定講師の資格のどれですか。意味を決めないまま出すと、受講生が資格を取得したと受け取る可能性があるため。
  2. 外部の検定の受験を、講座に含めますか。受験料と申込みは誰が負担し、誰が行いますか。申込みを逃した場合や不合格の場合の責任が変わるため。
  3. 認定講師になった人に、どこまで教えることを許しますか。動画の販売や、後進を育てることは許しますか。許す範囲により、禁止する行為の書き方が決まるため。
  4. 認定に有効期間を設けますか。更新の要件と、更新料や年会費はいくらですか。更新の仕組みがないと、認定が永久に続くことになるため。
  5. 認定を取り消す場合は、どのような手続で行いますか。表示の削除は、いつまでに求めますか。手続を決めないと、取消しの効力が争われるため。
  6. オンラインレッスンは、何回、何分、いつまでの契約ですか。録画は渡しますか。給付の内容と視聴の期間が、返金の精算の基礎になるため。
  7. 販売する動画に、音楽、モデルの手、他人の作品、教材の図は入っていますか。権利のないものが入っていると、販売が差止めの対象になりうるため。
  8. 動画の編集や撮影を外部に頼みましたか。完成した動画の権利は、誰が持ちますか。取り決めがないと、自分の動画を自由に使えない場合があるため。
  9. 受講者は、未成年や、すでに事業を営む人を含みますか。消費者かどうか、親権者の同意が要るかどうかに関わるため。

書き方のポイント

ヒヤリングの答えは、「できるか」ではなく「やるか」で聞きます。認定講師に動画の販売を許すかどうかは、事業の方針の問題です。

起きがちなことと、備え

受講生は、卒業生になり、認定講師になり、やがて動画を売る側に回ります。その途中で書類の言葉の意味がずれると、どこかで争いになります。判断する人、許す範囲、使ってよい権利を、一つずつ書いておくことが土台です。スタッフとの関係はネイリストとの業務委託契約書・秘密保持契約書で、回数券やコース契約との違いはネイルの回数券・コース契約書で扱っています。

よくあるご質問

ネイル検定の対策講座で、合格を約束してもよいですか。

約束できません。合否は検定の実施団体が判断するもので、スクールや講師が決められないためです。「合格できます」と断定すると、事実と異なる説明として契約の取消しの対象になりえます(消費者契約法4条1項1号)。出題範囲に沿った対策を行うこと、合否は実施団体が判断すること、受験料と申込みが別であることを、募集ページと契約書に書きます。

修了証や認定証を出すと、講師として教える資格を与えたことになりますか。

書き方次第です。修了や認定が何を意味するかを書かないと、受講生は講師資格を得たと受け取りかねません。修了証は自校の修了を示すもので、検定の合格や講師資格を意味しないこと、講師資格は別の規約に同意して別の審査に合格した人にだけ付与することを、証書と規約の両方に書いておきます。

認定講師が自分でオンラインレッスンや動画講座を売ることを、禁止できますか。

契約で制限できます。ただし、自分の教室で有料のレッスンを開くことまで一律に禁止すると、認定講師の生計が成り立たなくなります。認定講座や資格取得型の講座を独自に開くこと、講師を養成すること、教材を複製・転載して動画にすることを禁止し、自作の動画や自分のレッスンの扱いは承諾制や条件つきで許す、という分け方が実務で見られます。

オンラインレッスンのキャンセル料は、どのように決めればよいですか。

キャンセルの時期ごとに区分を設け、各区分で事業者に生ずる平均的な損害の額を超えないようにします(消費者契約法9条1項1号)。枠を他の人に売れる期間、準備した教材、すでに発送した送付物が損害の中身です。説明を求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努める必要があるため(同条2項)、算出の資料を用意しておきます。

施術動画を販売するとき、音楽や素材について何を確認すればよいですか。

販売や有料配信に使ってよい条件かどうかを確認します。SNSの投稿用に用意された音源は、販売する動画には使えない場合があります。フォント、素材の画像、モデルの手や顔、他人の作品の再現も同じで、販売までを含む許諾や同意が必要です。権利のないものが入っている場合は、外すか、許諾の取れたものに差し替えます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の店舗への当てはめは、提供するメニュー、スタッフの働き方、お客様が事業者か個人かなどによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者契約法(消費者庁) / 公正取引委員会 フリーランス法 / 個人情報保護委員会 / 厚生労働省 / 国民生活センター / 小規模事業者持続化補助金(商工会地区の事務局) / 同(商工会議所地区の事務局)

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