このページの要点
- 稼働日は、スタッフが申告し、サロンが予約システムに反映して確定する二段で決める。
- 予約のある時間は実施義務、予約のない時間は努力義務にとどめ、事前連絡による切り上げの自由を残す。
- 欠勤・実施不能の負担は損害賠償額の予定(民法420条)とし、責めに帰することができない事由は免除する。
- 新人の最低報酬保証は、本体に入れず、期間を限った覚書にして、稼働時間や出勤に条件を付けない。
最初に結論:稼働日は「申告して確定」、欠勤の定額は「予定」、最低保証は「期間を限った覚書」
結論
ネイルサロンの業務委託で最も揉めやすいのは、報酬の料率より前の、「来る日」と「来なかったとき」の約束です。予約が詰まる曜日にスタッフが休む。予約のない日に「今日は行きません」と連絡が入る。夕方の予約が入る見込みの日に、スタッフが早めに帰ってしまう。どれも、雇用であればシフトと就業規則で処理できる場面です。業務委託では、サロンに「出勤を命じる」「帰るなと言う」権限がありません。そのかわりに、契約書の中で、確定する手続、実施する義務、連絡の方法、守れなかったときの精算を、一つの流れとして組み立てます。
アトラス行政書士法人が、ネイル・まつげエクステンション・アイブロウのサロンのスタッフ契約を改訂するときも、この流れを最初に決めます。報酬の料率や指名料の扱い(ネイリストとの業務委託契約書・秘密保持契約書で扱っています)を整えても、稼働の決め方がサロンの都合に寄りすぎていれば、業務委託の実態が失われ、雇用と判断される危険が残るからです。このページでは、稼働日の確定、予約のある時間とない時間の書き分け、欠勤と実施不能の損害賠償額の予定、新人のための最低報酬保証の順に、条文の組み立てを説明します。
1日の流れで見る:申告した時間帯のなかで、どこに義務があり、どこが自由か
予約あり 予約なし 確定していない時間 問題になる場面
申告して確定した11時から17時までの時間帯でも、義務が重いのは予約のある14時だけです。それ以外の時間は、努力義務にとどめ、拘束しないと書きます。
稼働日と時間帯は、申告と確定の二段で決める
業務委託の受託者は、いつ働くかを自分で決められる立場です。しかし、サロンは予約を受け付ける側として、いつ誰が施術できるかを把握していなければなりません。この二つを両立させる方法が、「スタッフが申告し、サロンが反映して確定する」方式です。
毎月の稼働日が決まるまで
- 勤務枠をサロンが示す早番・遅番など、時間帯の区分(勤務枠)を定めて、スタッフに知らせます。区分を変えるときは、事前に周知し、変更後の区分は少し先の月分の申告から適用します。
- スタッフが希望を申告するサロンが定めた期限までに、翌月以降に稼働を希望する勤務枠と日数を、合意した連絡手段で申告します。LINEやメールなど、記録が残る手段にします。
- サロンが予約システムに反映して確定する申告された内容を予約受付システムに反映した時点で、その期間の稼働時間帯として確定します。サロンが勝手に枠を足したり減らしたりしません。
- 確定後の変更は協議で行う確定した稼働時間帯の変更は、双方の協議で行います。急な変更を一方的に求める書き方は避けます。
「出勤を命じる」のではなく、「申告を受けて確定する」という手続を踏むことが、業務委託としての諾否の自由を示す証拠になります。
希望が重なったときの優先配分
人気の曜日や時間帯に、複数のスタッフの希望が集中することがあります。全員の希望を受け入れられないとき、サロンが「誰を優先するか」を決める必要があります。ここで、サロンの好みや心証で選べる書き方にすると、実質的な指揮命令と受け取られます。事務所の契約書では、優先の基準を、「稼働時間帯中に実際に予約対応をした実績」その他の合理的な基準と書きます。選ばれなかったスタッフの申告は、別の勤務枠や別の期間について、あらためて考慮します。
もう一つ、必ず書き添える歯止めがあります。「早退したことだけを理由に不利に扱ってはならない」という一文です。基準を「早退した回数」にしてしまうと、予約のない時間に切り上げる自由(後述)が、枠を失うという不利益を通じて、事実上使えなくなります。基準は「実績」、禁止は「早退したことのみを理由とする不利益」と、役割を分けて書きます。
勤務枠の申告と確定の条文例(要点)
委託者は、早番、遅番その他の勤務の枠(以下「勤務枠」という。)を定め、受託者に周知する。
受託者は、委託者が定める期限までに、翌月以降に稼働を希望する勤務枠及び日数を申告する。
委託者は、前項の申告の内容を予約受付システムに反映し、これをもって当該期間における受託者の稼働時間帯として確定する。
特定の勤務枠について申告が必要な人数を超えるときは、委託者は、受託者らの稼働実績その他の合理的な基準により、稼働時間帯を確定する者を優先して定めることができる。ただし、受託者が稼働時間を短縮したことのみを理由として、不利に取り扱ってはならない。
優先配分を設ける場合は、「稼働実績」の意味(何を数えるか)を同じ条の中で定義します。
予約のある時間は実施する。予約のない時間は拘束しない
サロンの本音は、「予約が入っていなくても、営業時間中は誰かに店にいてほしい」というところにあることが多いものです。飛び込みの来店、電話の予約、通りがかりのお客様への対応があるからです。しかし、予約の有無にかかわらず店に留まることを義務づければ、それは仕事の完成ではなく、時間と場所そのものを拘束することになります。最高裁判所は、労働からの解放が保障されていない不活動時間は労働基準法上の労働時間に当たると判断しており(最高裁平成14年2月28日判決)、業務委託で同じように待機を義務づければ、その考え方が持ち込まれるおそれがあります。
そこで、時間を二つに分けて書きます。予約が確定している時間については、「誠実に実施する義務」を負わせます。何を・いつ行うかが特定された一件の仕事を完成させることは、業務委託の当事者が当然に負う債務です。予約のない時間については、来店や電話に対応できる状態を保つよう「努める」という努力義務にとどめ、店内に拘束するものではないと明記します。
できること・できないこと(業務委託の枠内か)
| サロンが求めたいこと | 業務委託の枠内 | 理由 |
|---|---|---|
| 予約を割り当てた時間に、必ず施術してほしい | できる | 内容が特定された一件の仕事を完成させる義務は、受託者が当然に負う債務である |
| 予約のない時間も、店に残ってほしい | 義務づけはできない(努力義務にとどめる) | 仕事の有無にかかわらず時間と場所を拘束することになり、労働者性が強まる |
| 切り上げる前に、連絡してほしい | できる | 連絡は、予約の再割当てやお客様への対応の確保のためで、許可制ではない |
| 切り上げたい人に、理由を示して考え直してもらう | できる(限定的に) | 対等な当事者としての「お願い」の範囲。受託者に断る自由が残る |
| 早退を許可制にしたい | できない | 行動の可否を一方的に決める権限は、指揮命令権そのものである |
| 従わなかった人に、注意や指導をして懲戒的に扱いたい | できない | 懲戒は、雇用に固有の権限。業務委託でできるのは、契約上の責任の追及に限る |
| 枠の配分を、実績のある人に厚くしたい | できる(合理的な基準で) | 発注者としての采配の範囲。ただし早退のみを理由とする不利益取扱いは避ける |
右端の理由は、労働基準法研究会報告(昭和60年12月19日)が示した判断要素(諾否の自由、指揮監督、時間的・場所的拘束、代替性、報酬の労務対償性)に基づく整理です。
切り上げの連絡と、理由を示した調整の求め
予約のない時間に切り上げたいスタッフは、サロンに事前に連絡したうえで、稼働時間を短縮できると書きます。サロンの許可は要りません。そのうえで、サロンは、短縮によって来店対応に支障が生じるおそれがあるときは、その理由を示して調整を求めることができ、スタッフは正当な理由がない限り応じる、という定めを置きます。「無人になる」「夕方に飛び込みが多い曜日である」といった理由は、来店対応に支障が生じるおそれの典型です。「その日は別の日の半休を認める」という振替の提案は、調整の一つの形として実務上有効ですが、契約上の義務ではなく、納得を得るための工夫として位置づけます。
注意点があります。この調整の求めを、毎回、どんな状況でも使うと、早退の自由は名ばかりになり、常に稼働を強制されている状態と変わりません。求めるのは、過去の実績からみて、直前の予約や飛び込みが実際に見込める曜日・時間帯に限ります。契約書にも、「受託者の所在や行動を、この定めの範囲を超えて指示しない」という一文を添え、調整の求めがその線の内側にあることを示します。
欠勤と実施不能の損害賠償額の予定:金額の決め方と免除
確定した稼働日に連絡なく来ない。予約済みの枠を、スタッフの都合で実施できなくなる。サロンには、お客様への連絡、予約の組み替え、機会の損失が生じます。この負担をあらかじめ書いておくのが、損害賠償額の予定です。民法420条1項は、債務不履行があったときの賠償額を、あらかじめ当事者が決めておくことを認めています。
欠勤・実施不能の負担の組み立て方(例)
| 場面 | 負担の書き方 | 考え方 |
|---|---|---|
| 確定した稼働日に欠勤し、その時間帯に予約の割当てがなかった | 定額(サロンの実情に合う少額) | 予約がないので、お客様への損害はない。稼働を前提に準備や配置を組んだことへの負担にとどめる |
| 予約の割当てがあったのに、スタッフの都合で実施できなくなった | 当該予約の施術メニューの定価に対する割合(たとえば5割) | 失った売上と、お客様への連絡・謝罪の負担を、メニューの価格に連動させて説明できる形にする |
| スタッフの責めに帰することができない事由(急病、交通機関の運休、家族の事情など) | 請求しない | 予定額は、スタッフに落ち度があるときの定めにする。診断書の提出を一律の条件にしない |
金額や割合は、サロンの実情(客単価、代わりの人の手配の難しさ)から説明できる範囲に収めます。
計算の例(定価8,000円のメニューの予約が入っていた場合)
- 定価の5割を予定額とするとき8,000円 × 50%4,000円
- 予約がなかった日の欠勤を、定額で定めるとき定額(契約書に金額を記載)契約書の金額
- 急病で実施できなくなったときスタッフの責めに帰することができない事由0円
実際に生じた損害より極端に大きな額を予定すると、民法90条(公序良俗)の問題になる余地があります。
書き方には三つの注意があります。一つ目は、他の賠償条項と重ねないことです。多くの契約書には、契約違反一般について損害賠償の上限を定める条項があります。欠勤や実施不能の場面で、予定額に加えて一般の賠償条項による請求もできるように読めると、スタッフは同じ欠勤で二重に負担することになります。予定額の条項を「この場面に限った特則」とし、一般の賠償条項は適用しないと明記します。
二つ目は、相殺の条件です。予定額を、翌月の報酬から差し引くことができるのは、スタッフの責めに帰すべき事由に基づく債務で、金額と支払期限が明確になり、期限を過ぎても支払われない場合に限る、と書きます。弁償金が発生した時点で自動的に天引きできる書き方は、報酬の減額の問題(フリーランス法5条1項2号など)につながります。三つ目は、実態が雇用と判断されたときです。労働基準法16条は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならないと定め、違反には六月以下の拘禁刑または三十万円以下の罰金が定められています(同法119条1号)。欠勤の予定額を置くのであれば、その前提として、稼働の決め方や拘束の程度が業務委託の実態を保っていることが欠かせません。
予告して辞めるだけで一律の違約金を課す条項
契約を終了するときの定めにも、同じ視点が必要です。サロンが用意した契約書に、適法な予告をして解約する当事者に、理由を問わず一律の違約金を課す条項があることがあります。受託者の「契約をやめる自由」を金銭で一律に制約する条項は、実態が雇用と判断されれば労働基準法16条に触れ、業務委託であっても民法90条により無効とされる余地があります。事務所の書類では、この条項を削除し、予告期間を守らずに解約した場合に限って、実際に生じた損害の賠償を請求できると改めています。予告義務の実効性は、損害賠償で確保します。
新人のための最低報酬保証は、本体ではなく覚書で
開業したばかりのサロンに入る新人は、最初の数か月、指名客がいません。完全歩合のままでは収入が安定せず、定着しにくいという悩みがあります。そこで、一定の期間だけ、歩合が一定額に届かないときは最低額を保証する仕組みを設けたい、という相談があります。報酬の計算方法は契約自由の範囲ですから、最低保証そのものを禁止する法律はありません。問題は、保証があることで、報酬が「成果」の対価ではなく「時間や出勤」の対価に見え、労働者性の判断で雇用の方向に傾くことです。
最低報酬保証のイメージ(保証額を月8万円、歩合率を40%としたとき)
- 売上15万円の月歩合 6万円 → 保証で補う8万円
- 売上20万円の月歩合 8万円 → 歩合どおり8万円
- 売上25万円の月歩合 10万円 → 歩合どおり10万円(保証を超える)
保証は、歩合の「下限」を引き上げるだけで、保証を超える月は実際の歩合を支払います。
事務所の書類で、リスクを抑えるために置く条件は三つです。第一に、期間を限ること。契約開始から最初の数か月に限り、その後は自動的に通常の歩合計算に戻り、更新や延長への期待を生まない形にします。第二に、稼働時間・日数・場所に条件を付けないこと。「保証する代わりに、この時間は必ず出勤する」という引き換えを設けません。第三に、保証額の基礎が実際の施術の売上であること。出勤したかどうかではなく、成果の計算結果に対する下限であるという構造を保ちます。
本体の契約書は、全員に共通のひな形です。最低保証は特定の新人だけに適用されるため、本体には入れず、対象となる人との契約のときにだけ添付する「覚書」にします。覚書の側で、加算のルールだけを定めます。
最低報酬保証に関する覚書の条文例(要点)
委託者は、受託者に対し、契約の効力発生日から○か月間(以下「育成期間」という。)に限り、本契約の定めにより計算した業務委託報酬が金○円に満たない月については、その差額を加算して支払う。ただし、受託者が当該月に本業務を全く実施しなかったとき(受託者の責めに帰することができない事由による場合を除く。)は、この限りでない。
前項は、受託者の稼働時間、稼働日数又は稼働場所を保証し、又はこれらに条件を付けるものではなく、受託者が自らの裁量により行った施術の対価としての報酬について、育成期間に限り最低額を定めるものである。
育成期間の経過後は、前2項は適用せず、報酬は本契約の定めによってのみ計算する。
育成期間中に本契約が終了したときは、その月の最低額は日割りで計算し、本契約の定めにより計算した報酬の額と比較して、いずれか高い額とする。
第1項ただし書の除外は、丸1か月まったく稼働しない月にも保証額を払うことになる事態を避けるためです。他方で、急病などの場合を除外の対象外にするため、その場合は保証が及ぶ点を、あらかじめ運営側が理解しておく必要があります。
第4項は、育成期間の途中で契約が終了する場合の清算です。本体の中途解約の定めは、締結から一定期間が過ぎた後にしか効力を生じないことが多く、育成期間と時期が重ならないため、覚書の中で独自に日割りの清算方法を置きます。
店舗の管理をスタッフに任せる報酬は、別の覚書で
最低保証と並んで相談が多いのが、経験のあるスタッフに、シフト希望の取りまとめや新人へのアドバイスなどの管理業務を任せ、その分の報酬を支払いたいというものです。ここで注意が必要なのは、報酬の性質よりも、指揮監督の要素です。他のスタッフの管理は、サロンが本来持っている権限を、受託者の一人に渡すことに近づくためです。管理担当者自身が店長のような立場と評価されるおそれと、管理される側のスタッフに、管理者を通じた間接的な指揮命令が及んでいると評価されるおそれの、二方向のリスクがあります。
管理業務で、委ねてよい範囲と、サロンに残す範囲
| 項目 | 委ねてよい範囲(取りまとめ・助言) | サロンに残す範囲(決定・指示) |
|---|---|---|
| シフト | 各スタッフの希望を集め、案をつくる | 最終的に確定する |
| スタッフ間の調整 | 希望が重ならない場合の連絡・情報共有 | 希望が競合する場合の調整・決定。従わない人への指導や懲戒的な措置 |
| 新人のサポート | 技術面・業務面の助言、相談に乗る | 合否の評価や処遇の決定 |
| 売上の支援 | 売上状況の確認、改善の提案 | 個々のスタッフへの目標の強制。達成できない場合の措置 |
| 報告 | 店舗の状況と課題の報告 | 報告を受けた判断 |
条文にも、この書き分けをそのまま書きます。運用でも、シフトの確定通知はサロンの名義で行い、管理担当者への不満はサロンに直接申し出られると周知します。
報酬の名称も大切です。「店長手当」や「役職手当」は、給与の一項目を指す雇用の言葉で、雇用を連想させます。「管理業務報酬」「成果報酬」のように、追加で受託した業務の対価であることが分かる名称にします。成果報酬の比較に稼働時間を使うときは、実際の勤怠ではなく、スタッフが申告して確定した時間帯の時間数を基準にし、当日の途中で切り上げても数字が変わらないようにします。そうしないと、早退の自由を行使するたびに、管理担当者の報酬が変動し、自由が使いにくくなるためです。
稼働と欠勤の条文を作る前に、確認しておきたい問い
- スタッフは、いつ働くかを、実際に自分で選べていますか。申告と確定の手続が、実際の運用でも行われているかを確かめます。契約書だけが業務委託でも、実態が違えば意味を持ちません。
- 予約のない時間に、切り上げた人が不利益を受けたことはありますか。枠の配分や予約の回し方で、事実上の制裁になっていないかを点検します。
- 欠勤の予定額は、実際のサロンの負担から説明できますか。機会の損失、お客様への連絡、代わりの手配の手間を、具体的に説明できるかを確認します。
- スタッフの責めに帰することができない事由を、どう扱いますか。診断書を条件にするか、状況に応じて合理的に判断するか。免除の基準を先に決めます。
- 新人の最低保証は、誰に、いつまで、いくらで適用しますか。対象者と期間と金額を覚書の欄に入れます。更新や延長を前提にしない運用を確認します。
- 管理を任せるスタッフに、決定権を渡していませんか。運用で、最終決定をサロンが実質的にも行っているかを確認します。
事務所の書類では
事務所では、稼働と欠勤に関する条文を、「確定(申告→反映)」「実施(予約のある時間)」「連絡(予約のない時間)」「精算(欠勤・実施不能)」の4つの部品として組み立て、一つの図にして説明書に載せています。部品を分けると、どこまでが業務委託の枠内か、サロンのどの希望が雇用でなければ実現できないのかが、依頼者にも見えるようになります。
たとえば「暇でも帰るな」と命じたい、早退を許可制にしたい、という希望は、契約書の工夫では実現できません。その場合は、経済的な工夫(完全歩合の動機づけ、予約の割当ての采配)で近づけるか、その部分を雇用に切り替えるかの、経営判断になります。切替えの判断の手順は、サロンスタッフを雇用から業務委託に切り替えるときで説明しています。
起きがちなことと、備え
稼働日、欠勤、最低保証は、サロンの運営上の要望が最も強く出る場面です。要望をそのまま条文にすると、業務委託の実態を損ない、書面全体の信用を落とします。要望を「確定」「実施」「連絡」「精算」に分けて書き、実現できない部分は経営判断として別に整理することが、有事に使える契約書への近道です。研修にかかった費用の扱いはサロンの研修費・講習費と特待生制度、辞めるときの手続はネイリストが辞めるときの手続で扱っています。
よくあるご質問
業務委託のネイリストに、出勤日を指定してもよいですか。
サロンが一方的に指定する書き方は避けます。スタッフが希望の勤務枠と日数を申告し、サロンが予約システムに反映して確定する二段の方式にします。確定した後の変更は、双方の協議で行います。
予約のない時間も、店にいるよう義務づけられますか。
義務づけはできません。予約が確定している時間は誠実に実施する義務を負わせられますが、予約のない時間は、来店や電話に対応できるよう努める努力義務にとどめ、店内に拘束しないと書きます。最高裁平成14年2月28日判決が示すとおり、労働からの解放が保障されない時間は労働時間として扱われるおそれがあります。
無断欠勤に、定額のペナルティを定めてもよいですか。
業務委託では、民法420条1項により損害賠償額を予定できます。ただし、実際の負担から説明できる範囲にとどめ、スタッフの責めに帰することができない事由は免除します。他の賠償条項と重ねて請求しないよう、特則と明記します。実態が雇用と判断されると、労働基準法16条で賠償額の予定が禁じられます。
新人の最低報酬保証を設けると、雇用と判断されますか。
保証があるだけで直ちに雇用になるわけではありません。期間を最初の数か月に限る、稼働時間・日数・場所に条件を付けない、保証額の基礎を実際の施術の売上にする、という3点を守り、本体ではなく覚書で定めると、リスクを低く抑えられます。
経験のあるスタッフに、シフトの取りまとめを任せたいのですが。
取りまとめ、連絡、助言、報告にとどめ、シフトの最終確定、希望が競合したときの決定、指導や懲戒的な措置、売上目標の強制は、サロンに残します。この書き分けを条文に書き、運用でもサロンが最終決定を行います。報酬は「手当」ではなく「管理業務報酬」と呼びます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の店舗への当てはめは、提供するメニュー、スタッフの働き方、お客様が事業者か個人かなどによって異なります。事務所の書類での扱いとして紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたネイル・まつげ・眉などの美容系サロンの利用規約、業務委託契約書、誓約書、同意書などの実務に基づくものを、依頼者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月18日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者契約法(消費者庁) / 公正取引委員会 フリーランス法 / 個人情報保護委員会 / 厚生労働省 / 国民生活センター / 小規模事業者持続化補助金(商工会地区の事務局) / 同(商工会議所地区の事務局)