このページの要点
- 定番のデザインや技法は守られにくいが、作例写真は撮影者の著作物になるのが通常で、無断転載には削除や賠償を求められる。
- 写真の権利は撮った人にあり、スタッフ・業務委託・外部カメラマンの写真は、契約で帰属と利用範囲を決めておかないと店に移らない。
- 真似をされたときは、著作権、ネイルチップなど商品の形態模倣、契約のどれで言えるかを先に見分ける。
- サロン自身も、持ち込み画像、他店の写真、素材の使い方で他人の権利を侵さないよう、運用と規約を整える。
結論
ネイルデザインそのものが著作権で守られるかは、デザインによって分かれます。定番の配色や、広く行われている技法は、ほとんどの場合守られません。一方、施術後に撮った写真は、撮影した人の著作物になるのが通常で、無断で転載されれば、削除や賠償を求めることができます。他店に真似されたときは、著作権で言えることと、不正競争防止法で言えることを、先に見分けます。そのうえで、サロン自身が他人の権利を侵さない運用と、規約・同意書・スタッフ契約・外注契約の書き方を整えるのが、実務の順序です。
ネイルサロンの集客は、仕上がりの写真が中心です。ホームページ、Instagram、予約サイトの作例、チラシ、スクールの教材まで、写真とデザインは、サロンのもっとも大切な資産になっています。ところが、その資産の権利が誰にあるのかは、開業時にほとんど決められていません。オーナーが撮った写真は自分のもの、スタッフが撮った写真も店のもの、と思い込んでいると、スタッフが辞めたときや、外部のカメラマンに頼んだとき、他店に写真を使われたときに、初めて行き違いが表に出ます。
このページでは、守られるものの線引き、写真の権利者、真似・無断転載への対応、サロン自身が侵害しないための注意、規約や契約への書き方を、条文例とあわせて見ていきます。キャンセル料や回数券はネイルサロンのキャンセル料と無断キャンセル・お直し保証のページにあります。
ネイルデザインは著作物になる?守られるものと守られないものの線引き
結論から言うと、「ネイルデザインは著作権で守られる」とも「守られない」とも、一律には言えません。著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定めています(著作権法2条1項1号)。また、美術の著作物には美術工芸品が含まれます(同条2項)。爪に施すデザインは、実用品に近い面と、絵画のような美的な面の両方を持つため、個別の判断になります。
判断の分かれ目は、「創作的な表現」といえるかどうかです。著作権は、アイデアや技法そのものではなく、具体的な表現を守る権利と理解されています。そのため、次のようなものは、守られにくいと考えられます。
- フレンチ、グラデーション、ワンカラー、マグネットなど、広く行われている定番のデザインや技法
- 季節の流行色を使った配色の組み合わせ
反対に、手描きで描き込んだ一点物のアートや、サロン独自の絵柄、立体パーツを組み合わせて全体で一つの図柄を作ったものは、作った人の個性が表れた表現として、著作物と認められる余地があります。ただし、認められるかどうかは、最終的には個別の事情で判断されます。「うちのデザインは著作権で守られているから、真似は全部違法」と考えるのは危険です。
デザインの種類ごとの見通し
| 種類 | 著作物になる可能性 | 備え |
|---|---|---|
| 定番のデザイン・技法(フレンチ、グラデーションなど) | 低い。多くの人が使う表現で、特定の人が独占できる性質のものではない | 真似を問題にするより、自店の強み(技術、接客、世界観)を言葉と写真で示す |
| 手描きの独自アート、オリジナルの絵柄 | ありうる。作り手の個性が出た表現であれば | 制作日、下絵、完成写真、制作過程の記録を保存する |
| 既存のキャラクターやイラストを爪に再現したもの | 元のキャラクターの権利は別の人にある。再現した側が新しい権利を主張するのは難しい | 作例として公開する前に、権利者の許諾の有無を確認する(後述) |
| 施術の手順、配合、技術上のコツ | 著作権の対象ではない(表現でなくアイデア・ノウハウ) | 秘密保持契約、スクールの教材の転載禁止の定めで守る |
守られる対象は二層ある:デザインそのものと、撮った写真
ネイルの権利を考えるときに混乱しやすいのは、「爪に施されたデザイン」と「それを撮った写真」が、別のものだという点です。デザインが著作物にあたるかどうかが微妙でも、写真は、撮影した人の著作物になるのが通常です。つまり、他店がデザインを真似しただけの場合と、あなたの撮った写真をそのまま持っていった場合とでは、言えることの強さが大きく違います。
ネイル写真の著作権は誰のもの?撮影者、スタッフ、外部カメラマン、お客様
写真は、著作権法で「写真の著作物」として例示されています(同法10条1項8号)。著作者、つまり写真を撮った人は、著作権と著作者人格権の両方を持ちます(同法17条1項)。しかも、登録や©マークのような手続きは不要で、創作した時点で自然に権利が生まれます(同条2項)。構図、光の当て方、角度、背景、仕上げの加工に、撮影者の選択があれば、爪の上のデザインを撮った写真でも、通常は撮影者の著作物と考えられます。
ここで決まるのは「誰が撮ったか」です。サロンの写真は、複数の人が撮ります。誰が権利を持つのかは、撮った人によって、次のように変わります。
撮影した人ごとの、権利の持ち主と決めておくこと
| 撮影した人 | 著作権の持ち主 | サロンが使うために決めておくこと |
|---|---|---|
| 雇用しているスタッフ | 職務著作の要件を満たせば店(法人その他使用者)。満たさなければスタッフ本人 | 就業規則や雇用契約に、業務で撮った写真の帰属を書く |
| 業務委託のネイリスト | 原則はネイリスト本人。職務著作が及ぶかどうかは争いになりやすい | 契約で、帰属(譲渡か、利用許諾か)、利用の範囲、人格権の扱いを決める |
| 外部のカメラマン | カメラマン。契約がなければ、依頼したサロンに自動では移らない | 譲渡するのか、許諾にとどめるのか。許諾なら、媒体・期間・加工の可否を決める |
| お客様(自分で撮った写真) | お客様。サロンが使うには許諾が必要 | リポストや紹介の許諾の取り方と、取り下げの方法を規約に書く |
撮影者が誰かで、権利の持ち主は変わります。
職務著作は、思ったより使えない
「スタッフが店の業務で撮ったのだから、店のものだろう」と考えるのは自然ですが、職務著作として店が著作者になるには、要件があります(同法15条1項)。①店の発意に基づくこと、②業務に従事する人が職務上作成したこと、③店が自己の著作の名義の下に公表すること、そして④契約や勤務規則に別段の定めがないこと、です。スタッフ個人のアカウントに載せた写真や、店の名義で公表していない写真は、③を満たさないと見られる場合があります。業務委託のネイリストは、そもそも「業務に従事する者」にあたるかどうかが、争いになりやすい場面です。
職務著作に期待しすぎず、契約で決めておくのが安全です。雇用か業務委託かの区別、切り替えるときの注意はサロンスタッフを雇用から業務委託に切り替えるとき、業務委託ネイリストとの契約書の組み立てはネイリストとの業務委託契約書・秘密保持契約書のページにあります。
権利を店に移す方法は二つ:譲渡と、利用許諾
写真を店が自由に使えるようにする方法は、大きく二つです。一つは、著作権を譲渡してもらう方法です。著作権は、全部または一部を譲渡できます(同法61条1項)。ただし、契約で、翻案権(27条)と二次的著作物の利用に関する権利(28条)を譲渡の対象として特に書いていないと、これらの権利は譲渡した人に残っていると推定されます(同法61条2項)。トリミング、合成、加工をして使うつもりなら、27条と28条を契約に書いておく必要があります。
もう一つは、利用を許諾してもらう方法です。著作権者は、他人に利用を許諾でき(同法63条1項)、許諾を受けた人は、許諾された利用方法と条件の範囲内で利用できます(同条2項)。「ホームページとSNSで使ってよい」という許諾を受けたカメラマンの写真を、チラシに印刷して配ったり、広告として配信したりすると、範囲を超えていると言われかねません。
著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)は、譲渡できません(同法59条)。そのため、著作権を譲渡してもらっても、撮影者が、無断でトリミングされたことや、名前を載せなかったことを問題にする余地が残ります。契約では、人格権を「行使しない」という約束を取っておくのが、実務で見られる書き方です。
外注した写真の条項:よくある書き方と直し方
カメラマンへの撮影依頼
媒体の列挙が少ないと、チラシや広告に使ったときに許諾外になる。加工の可否と、人格権の不行使まで書いておく。
外注の撮影では、被写体になるお客様やモデルの顔・氏名の掲載同意が、別に必要です。写真の権利と、被写体の同意は、別々の書類で取ります。
他店にデザインを真似されたとき、何が言えるのか
デザインを真似されたと感じたとき、感情的に相手に連絡する前に、「どの権利で言えるのか」を見分けます。言える根拠がないまま「パクリだ」と投稿すると、こちらが相手の信用を傷つけたと言われる可能性があります。使える根拠は、おおむね次の三つです。
真似をされたときに考える三つの根拠
| 根拠 | 言える場面 | 弱いところ |
|---|---|---|
| 著作権(デザイン・写真) | 写真をそのまま使われた。独自の絵柄を、ほぼそのまま再現された | 定番のデザインや技法は対象外。相手が自分で考えた(偶然の一致)なら侵害にならない |
| 不正競争防止法の商品形態模倣(2条1項3号) | ネイルチップやシールなど「商品」として販売されたものを、そっくり作って売られた | 対象は「商品」。施術という役務は、条文の文言上は対象にならない。販売開始から3年を過ぎると使えない |
| 契約 | 元スタッフ、スクールの修了生、シェアサロンの利用者が、契約で禁じられた使い方をした | 契約に書いていなければ使えない。書き方が広すぎると無効や限定解釈になる |
いずれも、相手の行為がこちらに依拠したものであること(こちらを見て作った)が前提になる場面が多くあります。
著作権で言うには、「依拠」と「類似」が必要
著作権の侵害を主張するには、一般に、相手がこちらの作品を見て(依拠)、表現上の本質的な特徴が同じ、または類似するものを作ったことが必要と考えられています。偶然に似てしまった場合は、侵害になりません。また、似ているのが定番の部分だけなら、独自の創作とは言えず、問題にできません。「同じ時期に、同じ流行のデザインが、複数の店で出ている」場面は、真似というより、トレンドの重なりと見るほうが自然です。
ネイルチップやシールは「商品」として守れる場面がある
不正競争防止法は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡する行為などを、不正競争の一つとしています(同法2条1項3号)。「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚により認識できる、商品の外部及び内部の形状と、それに結合した模様、色彩、光沢及び質感です(同条4項)。「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことです(同条5項)。
ネイルチップやネイルシールは、商品としての形態に、模様や色彩が含まれます。そっくりな商品を他者に作って売られた場合は、この規定で、販売の差止め(同法3条)や損害賠償(同法4条)を求める道があります。損害額の推定の規定もあります(同法5条)。ただし、日本国内で最初に販売された日から3年を経過した商品については、この規定は適用されません(同法19条1項6号イ)。販売を始めた日を記録しておくことが大切です。
一方、サロンでの施術は、商品の販売ではなく役務の提供です。条文の文言が「商品」の形態を対象にしている以上、サロンの施術で仕上げたデザインそのものを、この規定で直接守る形にはなりません。施術の見た目の真似に対しては、著作権が成り立つか、あるいは契約で禁止されているか、という別の道で考えることになります。
真似に気づいたときの進め方
- 証拠を保存する投稿のURL、投稿日時、アカウント名、画像を、画面の保存だけでなく、日付が分かる形で残します。相手が投稿を消す前に行います。
- どの根拠で言えるかを見分ける写真そのものの転載か、デザインの類似か、ネイルチップの販売か、契約違反かで、使える根拠が違います。
- まず穏やかに連絡する最初は、投稿者への連絡や、サービスの報告機能の利用にとどめます。相手が気づいていないだけの場合も多くあります。
- 書面にするときは、権利者名義で、事実と求めることだけを書く削除、使用の中止、再発防止の約束など、求めることを具体的に書きます。相手を非難する言い方や、事実と異なる言い回しは避けます。
写真を無断で転載されたら、削除から請求までどう動く?
写真の無断転載は、デザインの真似に比べると、権利の主張がはっきりしやすい場面です。典型的には、次のような形で起きます。
- 作例写真を、そのまま自分のアカウントや予約サイトに載せられた
- ロゴやウォーターマークを切り取って、自分の作例として掲載された
- トリミング・加工して、チラシや通販ページの商品写真に使われた
この場合に侵害されるのは、まず、複製権(著作権法21条)と公衆送信権(同法23条1項)です。写真を無断で保存し直して載せれば複製、インターネットで見られる状態にすれば公衆送信(送信可能化を含む)にあたります。さらに、ロゴを切り取って著作者名を消した、トリミングで構図を変えた、というときは、氏名表示権(同法19条1項)や同一性保持権(同法20条1項)の問題にもなります。
請求できること
権利者は、侵害する人や、侵害するおそれのある人に対し、侵害の停止や予防を請求できます(同法112条1項)。このとき、侵害の行為を組成した物(たとえば転載された画像のデータ)や、侵害の行為によって作成された物の廃棄なども請求できます(同条2項)。損害賠償は、故意または過失のある侵害者に対して、民法709条にもとづいて請求します。著作権法には、損害額を立証しやすくするための規定があり、侵害者が侵害によって利益を受けているときは、その利益額が権利者の損害額と推定されます(同法114条2項)。また、著作権の行使につき受けるべき金銭の額、つまり使用料に相当する額を、損害額として請求できます(同条3項)。
刑事罰の定めもあり、著作権を侵害した者は、十年以下の拘禁刑もしくは千万円以下の罰金に処され、またはこれが併科されます(同法119条1項)。著作者人格権の侵害は、五年以下の拘禁刑もしくは五百万円以下の罰金、またはこれの併科です(同条2項1号)。
損害額の考え方の例(数字は説明のための仮定です)
- 使用料に相当する額で請求する(114条3項)掲載許諾の料金を1点3,000円としている店の写真が、無断で8点掲載された3,000円 × 8点 = 24,000円
- 侵害者の利益を損害額と推定する(114条2項)転載を使った投稿で、施術の予約が増え、侵害者が得た利益が5万円と認められた5万円が損害額と推定される
実際の金額は、写真の内容、使われ方、期間などから、個別に判断されます。許諾料の料金表をあらかじめ決めて公開しておくと、使用料相当額を説明しやすくなります。
まずは、サービスの削除申出が現実的
転載がSNSや投稿サイトで行われている場合、多くは、サービスごとの著作権侵害の報告フォームで、削除を申し出ることができます。大規模な事業者には、法律にもとづいて、削除の申出の窓口を整え、対応することが求められています(情報流通プラットフォーム対処法。以前の名称はプロバイダ責任制限法)。申出には、通常、自分が権利者であること、侵害されている投稿の場所(URL)、連絡先などを示します。写真の元データや、撮影日が分かる記録があると、権利者であることを示しやすくなります。
他店が、あなたの写真を自店の施術例として載せたとき
他店が、こちらの写真を自店の作例のように見せて集客に使っているときは、著作権の問題に加えて、表示の問題があります。事実と異なる施術の質・内容を示す表示は、不正競争防止法の誤認惹起表示にあたりえます(同法2条1項20号)。消費者に対して、実際より著しく優良であると示す表示は、景品表示法の優良誤認にもあたりえます(景品表示法5条1号)。写真の削除を求めるときに、「自店の施術と誤認させる表示である」点も、あわせて伝えることができます。
サロンが他人の権利を侵さないために:持ち込み画像、参考画像、引用、素材
サロンが他人の権利を侵すおそれは、「無断で使う」場面だけでなく「許諾の範囲を超えて使う」場面にもあります。場面を分けて、注意点を整理します。
サロンが使う場面ごとの注意点
| 場面 | 起きがちな問題 | 運用の考え方 |
|---|---|---|
| お客様がキャラクターやブランドのデザインを持ち込んだ | 施術したデザインを作例として撮影して、ホームページやSNSに載せると、元の絵柄の権利者の権利に触れるおそれがある | 施術そのものは来店客の希望に応える範囲に収め、作例としての掲載は、権利者の許諾が得られるもの、または元の絵柄が入らないものに限る |
| 参考にした他店の写真を、並べて紹介した | 他人の写真の無断複製・公衆送信になる | 参考にしたい点は、自分の言葉で説明する。画像を載せるなら、許諾を得る |
| 背景に、ポスターや他人の作品が写り込んだ | 軽微な写り込みなら許される場合があるが、主役になっていると問題になる | 写真の撮影に付随して軽微に写り込むものは、正当な範囲内で利用できる場合がある(同法30条の2第1項)。主役にならないように撮る |
| スクール生の作品や、スタッフの過去作品を広告に使った | 作った本人の許諾の範囲を超える | 作品を使う範囲、期間、クレジット表記を、受講契約書(ネイルスクールの契約書一式)やスタッフ契約で決める |
引用は、「載せていい」という意味ではない
引用の規定(同法32条1項)は、公表された著作物を、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で使うことを認めるものです。他店の素敵な写真を紹介したいから、出典を書いて載せる、という使い方は、引用の目的上正当な範囲内かどうかが問われます。写真を飾りとして使っているだけの場合や、自店の文章が主ではなく、他人の写真が主になっている場合は、引用と認められにくいと考えられています。出典を書いたかどうかだけでは決まりません。
モニターの写真を店のホームページやチラシに使うときも、撮影者(モニター本人など)の許諾が要ります。広告表示の話はネイルモニターの契約とSNS集客にあり、申込書には写真の使用範囲と期間を書いておきます。
規約・同意書・スタッフ契約・外注契約に、どう書くか(よくある失敗と直し方)
権利の問題は、トラブルが起きてから決めようとすると、行き違いが出やすくなります。先に書類で決めておくのは、お客様向けの規約、スタッフ・業務委託ネイリストとの契約、外注先(カメラマン、ネイルチップの制作者)との契約の三つです。よく見られる書き方の誤りと、直し方を並べます。
よくある書き方と直し方
スタッフの撮影した写真
「帰属する」だけでは、27条・28条が残ると推定される場合がある。人格権の不行使と、退職後の個人アカウントでの使用の条件まで書く。
スタッフが無断で投稿したときの違約金
雇用されているスタッフに対し、違約金や損害賠償額を予定する契約は禁じられている(労働基準法16条)。業務委託でも、過大な違約金は、民法420条・90条の問題になる。
表の「変更前」は、実務で見られる書き方を、説明のために簡略に書き直したものです。
条文例:規約の、画像・デザインの取扱い
画像・デザインの取扱い(お客様向け利用規約)
当サロンが、ホームページ、SNS、予約サイト、店内掲示、印刷物に掲載する写真、動画、文章、デザイン図案(以下「掲載物」といいます。)の著作権その他の権利は、当サロンまたは正当な権利者に帰属します。
お客様は、掲載物を、私的な範囲で閲覧し、保存することができます。当サロンの事前の承諾なく、掲載物の複製、転載、加工、他の店舗やサービスの作例としての使用、営利目的での使用を行うことはできません。
前項にかかわらず、SNS等の各サービスが提供する共有機能(リポスト、シェア等)による紹介は、当サロンの掲載物であることが分かる形で行われる限り、妨げません。
お客様が、ご自身の爪の仕上がりを撮影された写真は、お客様のものです。当サロンは、お客様が撮影し、当サロンをタグ付けして投稿された写真を、公式アカウントでの紹介の範囲で使用することがあります。取下げのご希望は、いつでもお申し出ください。
第4項は、お客様が撮影した写真の権利がお客様にあることを前提に、店が使う範囲を限った書き方です。規約全体の組み立てはネイルサロンの利用規約・プライバシーポリシー・特商法表記のページにあります。
条文例:スタッフ・業務委託ネイリストが撮影した写真
業務で撮影した写真の権利(スタッフ契約)
乙が、本契約に基づく業務の遂行として撮影した写真及び動画(元データ及び加工後のデータを含みます。以下「撮影物」といいます。)の著作権は、撮影の時に、乙から甲に譲渡されます。この譲渡には、著作権法27条及び28条に規定する権利を含みます。
乙は、甲に対し、撮影物について、著作者人格権を行使しません。
乙が、自己のポートフォリオ、個人のSNSアカウントに、撮影物を掲載しようとするときは、当該撮影物に写るお客様から、そのような掲載についての同意を得ていることを確認し、甲の事前の承諾を得なければなりません。甲は、承諾に際し、掲載の方法(甲の名称の表示の有無を含みます。)を指定することができます。
本契約が終了した後も、乙は、前項の承諾の範囲を超えて撮影物を使用しません。甲は、乙が前項の範囲で撮影物を使用していることを、理由なく妨げません。
業務委託の場合は、報酬が譲渡の対価に含まれることを、契約書のなかで明らかにします。退職後のポートフォリオ利用についてはネイリストが辞めるときの手続のページが関連します。
権利の取り決めを作る前に、確認しておきたいこと
書類を作る前に、サロンの実際の運用を確認します。条文の整理は、運用の聞き取りの結果で変わります。
確認すること
- 写真は、誰が、何を使って撮っていますか。オーナー、雇用スタッフ、業務委託、外部カメラマン、お客様では、権利者が変わります。個人のスマートフォンで撮る場合は、元データの保管場所も確認します。
- 撮った写真を、どこに載せていますか。今後、増やす予定はありますか。ホームページ、SNS、予約サイト、チラシ、メニュー表、店内掲示、広告配信、通販ページ。許諾や承諾の範囲に、これらを漏れなく書くためです。
- スタッフが個人のアカウントに載せることを、認めていますか。認めるなら、条件(お客様の同意、店名の扱い、退職後の扱い)を決めます。禁止するなら、禁止の範囲を具体的に書きます。
- 外部のカメラマンや制作者に、依頼したことがありますか。契約書はありますか。契約がないと、著作権は撮影者・制作者に残ります。すでに使っている写真は、後から許諾の範囲を確認する必要があります。
- 自店の主力のデザインを、ネイルチップなどの商品として売っていますか。商品として売るなら、不正競争防止法で守れる可能性が出てきます。販売開始日の記録が、3年の期間の起点になります。
- お客様の持ち込み画像を、作例として載せたことがありますか。キャラクターやブランドの絵柄は、元の権利者がいます。すでに掲載している場合は、見直しが必要です。
- 過去に、写真やデザインを真似された、転載された経験はありますか。実際に起きた経緯から、規約の禁止事項と、気づいたときの対応手順を、具体的に作れます。
- 自店のデザインや写真に、制作日の分かる記録は残っていますか。先行性を示す資料になります。なければ、これからの保存の方法を決めます。
確認の結果によっては、規約・同意書・スタッフ契約・外注契約を、それぞれ作る必要があります。
起きがちなこと
写真の同意の取り方は施術同意書の作り方、写り込みの確認はネイルモニターの契約とSNS集客のページに続きます。
よくあるご質問
ネイルのデザインは著作権で守られますか?
デザインによります。定番の配色や広く行われている技法は、ほとんど守られません。手描きの独自アートなど、作った人の個性が表れた表現は、著作物と認められる余地があります。デザインを撮った写真は、撮影した人の著作物になるのが通常です。
スタッフが撮った作例写真の著作権は、お店にありますか?
雇用スタッフが職務として撮り、店の名義で公表している等の要件を満たせば、店が著作者になります(著作権法15条1項)。要件を満たさない場合や、業務委託のネイリストの場合は、撮影者に権利が残ることがあります。業務で撮った写真の帰属は、契約や就業規則で決めておきます。
他店にデザインを真似されたら、やめさせることができますか?
根拠があれば可能です。写真をそのまま使われた、独自の絵柄をほぼ再現されたときは著作権、ネイルチップなどの商品をそっくり作られたときは不正競争防止法の形態模倣が考えられます。定番のデザインや偶然の一致は、問題にできません。
自店の写真が無断で転載されたとき、まず何をすればよいですか?
投稿のURL、日時、アカウント名を保存し、元データと撮影日の記録を用意します。そのうえで、サービスの著作権侵害の報告フォームで削除を申し出るのが現実的です。損害賠償や差止めを求める道もあります。
お客様が持ち込んだキャラクターのネイルを、作例としてSNSに載せてもよいですか?
元の絵柄の権利者の許諾がないと、作例として公に載せるのは避けたほうが安全です。施術をすることと、作例として公開することは別です。掲載は、権利者の許諾のあるものや、元の絵柄が入らないものに限る運用が考えられます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の店舗への当てはめは、提供するメニュー、スタッフの働き方、お客様が事業者か個人かなどによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者契約法(消費者庁) / 公正取引委員会 フリーランス法 / 個人情報保護委員会 / 厚生労働省 / 国民生活センター / 小規模事業者持続化補助金(商工会地区の事務局) / 同(商工会議所地区の事務局)